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「さうです」
「何でもないぢやないかね、君から聞いたとほりだ。心配することはないと思ふな」
と、急に練吉が小耳にはさんで云つたのは、多分黙つて他のことを考へていたのだらう。
「あの人は来まいて」
「おい、ビールをくれ」と、しやがれた低い声で云ふと、土間の安テーブルの前に腰を下した。
房一は彼等の姿が消えてからもしばらくの間、ぼんやり元の椅子に腰をかけて、たつた今彼等がそこを曲つて行つた入口の土塀、それで一所だけ区切られた表の道路、その向ふに稍高手になつた畑地、といつたやうな物を漠然と眺めていた。
「患者さんですよう」
「さうだね。まさか医者の家に古障子の玄関といふわけにもいくまいね」
「このまゝでは責任者を出さなくてはならなくなる。手落ちは向ふにあるとしてもですよ」
房一はまだ考へ深さうにしていた。
「いやあ、全く」
私は朝と夕方と真夜中に入浴する。朝、ぬるいうちに私がはいり、そのあと熱くして家族がはいる。それをほッとくと、夕方、私には手頃のぬるさとなっている。
「チブスじゃないです。医者は何とか言っていたですが、まあ看病疲れですな。」