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    築地には四五本の木材が立てかけられて、玄関に通じる石畳の上には鉋屑が一杯に散らばつていた。その白いのや紅味がかつた真新しい木の色はふしぎな生気をこの家に与へていた。あの低い大きな屋根がぐつと身を起したやうにさへ見える。

    房一の態度が穏かだつたので、相手はいくらか落ちついた。

    来客の間にほつと寛くつろいだ空気が流れ、直造が袴をさばいて立ち上らうとした時だつた。

    「やあ、君か」

    「君は昨日その九州から来た連中を赤山へ案内して行つたちふぢやないか」

    徳次は房一が顔を洗ふ間傍に立つて眺めていた。それからふいに訊いた。

    印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。

    「すると、何ですか、十年契約といふやうなことにでもなすつたんですか」

    そこには一人の男が顔を手拭で蔽はれたまゝ、一種普通でない様子で寝かされていた。手拭の下からは赤黒く汚れた額の一部と、土埃にまみれた頭髪とがはみ出していた。その傍には、やはり印袢纏着の真黒い顔の男がついて、ぽかんとして戸外を眺めていた。

    「御病人はどちらで?」

    閑静で温泉もあるという家は売家だから住めない。貸家の方はたいがい山の上の温泉のない家で、ぜひ住んでくれないかと云ってきた空別荘も、景勝閑静な山荘であったが、温泉がなかった。

    傷は三箇所を縫つた。

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